英国セキセイ協会 会報 1981年 秋号

※ 交配する際、系統は、外見と同じぐらい重要である。

                    (故 W.ワットモー)


私は、もちろん近親交配(インブリーディング)そして、必要に応じて、ある程度のアウトクロス(異系交配)がよいと信じる者の一人である。私は、多くのセキセイインコのブリーダーは、この私の考えをあまり支持していないのではないかと思う。彼らは、私のような経験による効力などと言うものを信頼していない。彼らは、外見のみで交配を決め、構造的にその鳥がお互いに適合すれば、それらと同じかあるいはそれ以上によい鳥を生まねばならないと」信じている。私がしばしば言っているように、これは偶然による交配を行っていて、不合理な結果になる。この計画に従えば、総合優勝鳥を作出するのは、単純なことになる。世界一の♂にその系統に関係なく世界一の♀をかければ、事実上総合優勝鳥を沢山作出するのだから。


同じ原理が適用される

私は、読んだばかりのすばらしい本によって、本稿を著わす気になった。その本は、レオン.F.フィットニーの ”レース鳩作出の基本” である。実際、この本は、レース鳩にのみ向けられているのであるが、セキセイインコ愛好家にとっても、非常に役立つ。それは、どんな種類の家畜を作出する時でも、家畜作出の偉大な原理は、まったく、同様に適応されるからである。


以下に、ホイットニー博士の膨大な仕事からの抽出をいくらか示す。

平均すれば、一人の人間が、その人の好む鳥の系統を改善できるのは、どれほどわずかか、あるいは、自己の一群の鳥を創造せねばならないのは、どんなに短時間かについて考えてもみたまえ・・・・・・
一世代3年が無理な数字であろう、すなわち、成熟に達するのに1年、試験するのに2年・・・・・
実際、我々が、究極の目的とする所まで、作出の仕事を追及するために、忍耐強く研究する価値がある。

時々、アウトクロス(異系交配)が、すばらしい雛を作出する。これは、いわゆる ”ニッキング” (nicking:割り込むと言う意味ではきだめの鶴などと言うのに近い感じ)と呼ばれているものである。

この点について、ホイットニー博士は、「ニッキングが、意味するのは、特定の遺伝子の組み合わせが、愛好家による実験で、倒外的な固体を生むと言うことが発見されたと言うことである。そのペアーを交配し、一羽のみでなく、子供の大部分が優秀であることを見出す。しかし、その両親を他の鳥達と交配しても、その結果は、うまくいかない。それで、我々は、その♀、♂をニック(nick 割り込み)と呼ぶ。遺伝的に言えば、試行錯誤で、ここの遺伝子が他の遺伝子を相補しあって、すばらしいものを生むということを学んできた。そのときから、この鳥のペアーを固定する。ところが、たぶんそのすばらしい子供の子孫は、質的に劣るであろう。しばしばそういうことになる。

個人的には、一代目でよい子供を作出するアウトクロス(異系交配)は、♂、♀が別の近親交配の一族の一員であることを、しばしばみいだしている。

ホイットニー氏は、インブリーディングとは、一族内での交配を意味すると言う考えで私と一致する。例えば、兄(弟)と妹(姉)、叔父と姪、あるいは、いとこ同士の交配である。

従兄弟より、遠い交配は近親交配(インブリーディング)とは、考えない。また、 「インブリーディングは、ブリダーの自由に新しい品種、株(系統 ストレイン)、一族を確立するすばらしい方法であり、また、よい遺伝子を凝縮する方法である。」 インブリーディングは、各対立遺伝子対を均一にする方向に向く。

ホイットニー博士は、以下の点を強調する。すなわち、上質の鳥のみを用い、強健で健康(健全な・・・かたわでない)かつ、繁殖力のある鳥をインブリーディングする必要性を強調する。


戸棚の骨組み

インブリーディングは、良い点をすべて固定し、悪い点を捨てることにある。インブリーディングを続けると4代から5代めから、その結果が顕著になると計算される。特に、兄妹(姉弟)交配を繰り返した時そうである。この兄妹交配をそれほど避けないが、私は(ワットモー)は、決して好きではない。

インブリーディングにおいて,我々の、戸棚の中の骨組みにしっかり着眼しておかねばならない。もし、ある程度の危険を冒してもインブリーディングの長所を生かさないなら、ずっと続く成功を達成することは出来ないだろう。

この点を強調するなら、インブリーディングの最大の役割は、望ましくない形質を除去し、望ましい形質を二重にする点であると言える。

ホイットニー氏は、表を作成し、どれだけ続けて何代にも渡るインブリーディングを行うと、すべての遺伝子が均一な対になり、各々が似ると言うことを示した。


雑種強勢を維持する(雑種により、強健さを維持する)

永くインブリーディングを続ける過程で虚弱になった鳥を、アウトクロスにより、雑種の強健さを維持できる。この点につき、我々の博学な著者は、次のように述べている。アウトクロスは非常にしばしば、雑種強勢するので、いつも2つの一族の鳥群を掛け合わせるのが誘惑的になる。

ホイットニー氏は、私もつねに言っている通リ、最も良い鳥で健康なもののみをインブリーディングし続ける事を強調している。